日経サイエンス  2012年11月号

特集 利他行動のパラドックス

無私は最高の戦略

E. フェール(チューリヒ大学) S.-V. レニンガー(ジャーナリスト)

 多くの動物が親族に対して利他的行動を示す。しかし,身内ではない人を相手に利他行動を示すのは人間だけだ。見返りが期待できなくても協力することがあるし,社会的な評価が高まらなくてもそうした行動を取る。実験では,人は協力者に報い,離反者を罰した。懲罰を科すのにコストがかかる場合でも,罰する。

 なぜそうするのかは科学的な謎だった。そうした利他行動に直接の益はないし,個人にとっても得にはならないので,利他行動者が生き残る可能性は低下すると考えられるからだ。最近の実験によって,よりニュアンスに富んだ仮説の可能性が示された。遺伝的な進化と文化的な進化が組み合わさって,利他的社会が生まれたとする見方だ。

 

 

再録:別冊日経サイエンス223「孤独と共感 脳科学で知る心の世界」

著者

Ernst Fehr / Suzanna-Viola Renninger

フェールはスイスのチューリヒ大学実証経済研究所の所長。レニンガーは心理学のPh. D. を持つ生物学者で,チューリヒでジャーナリストとして活動している。

原題名

The Samaritan Paradox(SCIENTIFIC AMERICAN MIND December 2004)

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