日経サイエンス  2012年7月号

特集:ポリオ制圧へ

 かつて猛威を振るった小児麻痺(ポリオ)は,ワクチンが奏功し,世界的に患者数が激減している。だが制圧には,もうひとつ大きな壁が立ちはだかる。経口生ワクチンからの撤退だ。生ワクチンの場合,まれな確率ではあるが逆にポリオを引き起こすことがある。現在,2型ポリオはすでに流行が収束し,発症しているのはワクチン由来のポリオのみ。だがワクチンを接種した子どもが多数いる中で接種をやめれば,二次感染の恐れが残る。2型ポリオに対するワクチンからいかに撤退すべきかが,大きな課題になっている。

 先進国はすでにリスクのある生ワクチンから不活化ワクチンに切り替えている。日本は先進国中で唯一,生ワクチンの公的な接種を続けてきたが,このほどようやく不活化ワクチンが承認された。だが不活化ワクチンの導入を見越した生ワクチンの接種控えが起きており,専門家は接種率が下がることに懸念を示している。

 とはいえ世界のポリオを抑え込むことができたのは,経口生ワクチンの功績だ。その効果の立証を巡っては,冷戦下における米国とソ連の研究者どうしの共闘があった。知られざる歴史を併せて紹介する。

 

 

根絶計画 詰めの一手  H. ブランズウェル

冷戦下に生まれた生ワクチン  W. スワンソン

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