日経サイエンス  2012年2月号

特集 迫る巨大地震 サイエンス・イン・ピクチャー

大噴火近い? 白頭山

S. パーキンズ(サイエンスライター)

 静かに澄みわたったこの「天池(ティエンチ)」という湖は,東北アジア有数の観光スポットだ。その美しさは,これが同地域で最も危険な火山の噴火口であるという事実にそぐわない。中国名を長白(チャンパイ)山,朝鮮名で白頭(ペクトゥ)山という標高2744mの火山で,中国と北朝鮮の国境をまたいでそびえている。最後に噴火したのは1903年だが,近年,再び目覚めつつある兆候を示している。

 天池は3つの川(松花江,鴨緑江,豆満江)の水源で,噴火の際にはこれらの川がラハール(火山灰泥流)の流路になるだろう。高温の火山灰と泥,熱水が混ざって生コンクリートと同程度の粘り気を持つようになったもので,大噴火が起こるとこれが山の斜面を流れ下り,何十万人もの人々を危険にさらしかねない。

 去る3月に日本を襲った巨大地震と大津波を受けて,地元の科学者たちが動き出した。8月,中国と北朝鮮,韓国の地質学者が異例の共同チームを結成して山頂部の現地調査を実施。噴火を予測して災害に備えるべく,近くワークショップを開く予定だ。1999年に中国側の山腹に導入された地震計網と,斜面に設置したGPS(全地球測位システム)装置のデータから,一連の浅部地震のほか,山頂部が2002年以降しだいに隆起していることが検出されている。火山の下にあるマグマ溜まりにマグマが流入した結果だと研究チームはみている。マグマは地下深くのマントルから来ていると考えられ,だとすると噴火の可能性はさらに高くなる。

国際協力による調査研究が計画されてはいるが,現時点で共有できているデータは乏しいと釜山大学の尹成孝(ユン・スンヒョ)はいう。「いまのところ共同研究は簡単ではない」。

 

再録:別冊日経サイエンス183「震災と原発」

 

著者

Sid Perkins

フリーのサイエンスライター。テネシー州クロスビルを本拠に活動している。

原題名

Sleeping Giant(SCIENTIFIC AMERICAN November 2011)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

白頭山長白山ラハール