日経サイエンス  2012年2月号

特集:迫る巨大地震

続く地下変動

中島林彦(編集部)

 東日本大震災は約1000年前の平安時代の869年に起きた貞観地震の再来ともみられている。その貞観地震の後,東北地方は平安な時代になったのかというと,そうはならなかった。

 まず2年後に東北地方の日本海側にある鳥海山が噴火,それから44年後の915年に十和田カルデラが大噴火し,東北地方のほぼ全域に火山灰が降った。十和田カルデラの噴火は,過去2000年間に国内で起きた噴火の中で最大の規模であり,2度あった富士山の大噴火をも上回る。この大噴火のきっかけが貞観地震だったと多くの専門家はみている。巨大地震によって東北地方の広域で地下の応力バランスが変わり,それが十和田カルデラの下にあるマグマだまりを刺激し,大量のマグマが地表に噴出した。
 そのさらに約30年後,日本海を隔てた朝鮮半島の根元にある白頭山(長白山)で,十和田カルデラの噴火をはるかにしのぐ巨大噴火が起きた。ここ2000年間で世界最大の噴火だった。灰は海を渡って北海道から東北地方北部にまで降った。函館や青森での降灰の厚さは5cmを超えたようだ。この噴火も「貞観地震とつながりがあったのかもしれない」と東北大学地震・噴火予知研究観測センターの趙大鵬教授は話す。
 東北地方には近い将来,再び大津波が押し寄せる恐れもある。東日本大震災の際,日本海溝を東の境界とした南北約500km,東西約200kmに及ぶ断層が動いた結果,地下の応力バランスが広域で変化したからだ。

 

再録:別冊日経サイエンス183「震災と原発」

著者

中島林彦

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