日経サイエンス  2012年1月号

サイエンス・イン・ピクチャー

頭蓋骨は語る

A. クチメント(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 米CBSのテレビドラマ『コールドケース 迷宮事件簿』に出てくる刑事のように,ノースカロライナ州立大学の人類学者ロス(Ann H. Ross)は未解決事件の数々を考えて毎日を送っている。彼女の最新の業績は,現代人の頭蓋骨の性別と家系を特定するのに役立つ法医学用ソフトウエアの開発だ。

 法医学者はふつう,カリパスというノギスのような道具を使って人骨を計測している。これによって得られるのは2次元の測定値だ。これに対し,ロスが米法務省の研究費を得て開発した「3D-ID」というソフトは,デジタイザーによって取得した3次元計測値を使う。スタイラス(入力ペン)で対象をなぞり,その軌跡をコンピューターに入力する仕組みだ。「実空間での座標データが得られるので,どんな骨でも実際の形状をうまく把握できる」という。

 ロスは共同研究者とともにスペイン人の人骨標本を調べ,16世紀以降に女性の頭蓋骨のサイズが男性に近づいてきたことを発見し,2011年前半に論文発表した。スペイン人以外の人々についても同じことがいえそうだ。

3D-IDは在来の法医学ソフトと異なり,サイズの絶対値にとらわれずに形状だけに注目した正確な解析が可能だ。右の2つの写真に,頭蓋骨が男性のものか女性のものかを判断するのに3D-IDが利用しているいくつかの特徴を示す。

 

 

再録:別冊日経サイエンス225「人体の不思議」

原題名

How Skulls Speak(SCIENTIFIC AMERICAN October 2011)

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デジタイザー3D-ID